技術情報

弊社の技術品質担当役員が、大規模修繕工事にまつわる新しい工法や、
改修方法などの技術情報をお伝えします。


株式会社ヨコソー
技術品質担当役員 小野寺健
一級建築士

1次世代足場について

1.はじめに

最近では従来の鳥居型足場(門型の部材)に加え、クサビ式足場(棒状の部材)も多くなって来ましたが、各足場資材メーカーはより施工しやすく、より強度があり、より安全な部材を開発し、「次世代足場」という位置付けで商品開発を行っています。いくつかのメーカーが商品として出している中で、その中でより性能が良い次世代足場を紹介します。

2.作業員の服装

実際に機材センターに訪問させて頂き、まず驚いたのが作業員の服装です。職人さんである鳶職は、普通は通称「ニッカポッカ」と呼ばれるダボダボのズボンを履いて作業を行います。建設現場では良く見られる光景です。
しかし(株)スタックの鳶職は、まるで現場監督と間違えるような作業着を着用していて、スマートで清潔感がありました(写真は実演をして下さった営業マンの方です)。とても見た目の印象が良いです。

3.従来のクサビ型足場との違い

次世代足場は、クサビ型足場になります。しかし従来のクサビ型足場と違って大きく異なる点があります。

1)足場部材の接続を目視で確認

従来のクサビ型足場はハンマーで3・4回打ち付けてクサビ部分を固定しますが、ここまで打ち込めばO.K.という目視出来る基準がありません。足場部材を打ち込んだ際の「締まり具合」と目視での「飲み込み具合」でしか判断が出来ません。しかし次世代足場は部材が緊結されるとピンが飛び出すので、ハッキリ目視で確認することが出来ます。

2)騒音の軽減

前項で「ハンマーで3・4回打ち付けて」と記載しましたが、金属のかなり重いハンマーで足場部材を叩くので、大きな金属音がします。足場組立及び解体は、数人から十数人が連続して作業を行うので、あちこちでかなりの金属音が響き渡ります。
ファステックは1回もしくは2回、プラスチックハンマーやゴムハンマーで叩くことによって、足場部材のピンが飛び出してロックされる為、大きな金属音が連続的に発生することはありません。

3)据え置き型先行手摺

足場組立及び解体工事では従来の足場材の場合、最上段の足場での作業時は手摺が設置されていなく、親綱に命綱を繋いで作業を行います。近年では「先行手摺工法」が採用され、足場の床材を設置する前に先行して手摺を設置する工法が採用されていますが「先送り型」が主流で、上段設置時は一度外して設置し直します。この「設置し直し」をしなくて良い工法が「据え置き型」です。安全・作業効率共向上した足場材です。

4.工期短縮の為に

足場は倒壊防止の為、必ず「壁つなぎ」は必要となります。通常の壁つなぎは壁にドリルで穴を開け、アンカーと呼ばれる部材を埋め込み叩いて固定します。そのアンカーに壁つなぎ材をねじ込んで留めますが、ドリルの騒音・振動、足場解体時の穴の処理が必要になります。その為、建物の形状によって採用出来る箇所、出来ない箇所がありますが、コンクリートの立上り部に挟み込むタイプの壁つなぎ材があります。

5.最後に

今回の見学でご協力頂きましたメーカーの皆様ありがとうございました。足場での作業は高所での作業なので安全が最優先ですが、次世代足場は、更に工期短縮、居住者様の環境向上がプラスされる工法であるということを改めて感じました。今後の足場の法令改正も見据えて、積極的に提案して行きたいと考えています。 今後は足場だけで無く、その他の工事においても安全で工期が短く、環境付加の少ない材料や工法を調べ、積極的に導入するように努めて行きます。

2タイルの浮き補修について

1.はじめに

タイルの浮きの有り無しについては、パールハンマーという打診棒による音の違いで判断します。改修工事を実施する以前は当然ですが「足場」が無いので、廊下や階段、屋上、1階廻りといった手の届く範囲での調査しか出来ません。また管理組合様に依頼し、許可を頂いたお宅のみバルコニー内の調査を実施しています。よってタイル全面の調査は実施出来ない為、実際の工事で足場を組み立てて調査した結果、想定数量をはるかに超えるタイルの浮きが見つかることも少なくありません。

2.タイルは何に張られているのか

タイルは裏面に「張り付けモルタル」を塗って張られています。躯体コンクリートの精度が良ければ「直張り(じかばり)」をしていますが、表面が凸凹であったり、水平や垂直で無かったりして補修が必要な場合は、モルタル等で下地調整を行ってからタイルを張ります。よってタイル張りは、(1)「躯体コンクリート-張り付けモルタル-タイル」の場合と、(2)「躯体コンクリート-下地モルタル-張り付けモルタル-タイル」の場合の2種類の場合があります。

3.タイルの浮きの判別方法

タイルの浮き調査時の浮き音の種類は大きく分けて2種類あります。1つは打診棒で叩くと「キンキン」「ピンピン」という比較的金属音に近い高い音域の音がします。これはタイル自体の浮きの音で、前述の(1)の下地で、タイルのすぐ裏面で浮いているという音になります。もう1つは「ゴンゴン」「ゴロゴロ」といった鈍く音域の低い音がします。これは下地モルタルの浮きの音で、前述の(2)の下地で、モルタルの裏に大きな浮きがある音になります。タイルの打診調査(打検調査)は、この音の違いによって判断します。写真は下地モルタルからの浮いている部分を剥がしたものになります。

4.浮きタイルの補修方法(張り替え工法)

タイル自体の浮きは、通常の場合は浮いたタイルを剥がして新しいタイルに張り替えます。タイル裏面の張り付けモルタルの充填不足や、暑さ等で水分が急激に蒸発して張り付けモルタルが硬化しない「ドライアウト」現象によるもので、その浮きの範囲は比較的狭く、10枚以内で浮いていることが多くあります。タイル自体の浮きはタイル裏の空隙が狭く、エポキシ樹脂を注入しても充填出来ない為、張り替え工法を実施します。ただし1、2枚の浮きについては、補修を実施しない場合があります。タイルは張り付けモルタルだけで「剥がれ」に対する強度を保っている訳では無く、タイルの目地も重要な剥がれに対する強度を保っている為、撤去作業により健全なタイル目地を痛めてしまったり、機械工具の振動により他の浮いていないタイルが浮いてしまう「共浮き」が発生してしまう危険がある為、タイル目地が健全であれば、敢えて何も手を付けないということも選択肢の一つになります。

5.浮きタイルの補修方法(ピンニング工法)

タイル自体の浮きでは無く下地モルタルの浮きの場合、電動ドリルでタイルの目地の交点に躯体コンクリートに貫通するまで穴を開け、エポキシ樹脂を注入後、ステンレスピンを挿入する「ピンニング工法」を行います。浮いたタイルが剥落しないようにエポキシ樹脂とステンレスピンで留める工法になります。下地モルタルが「面」で浮いている箇所を、通常は25穴/m2(タイル8枚に1穴)を標準として留めます。しかし実際の現場では今後の地震等の影響を考慮し、より接着強度を高める為に50穴/m2(タイル4枚に1穴)で留め、タイル1枚分の下地にエポキシ樹脂が一部でも充填されるようにピンニングの数を増やして実施しています。

エポキシ樹脂の注入は手動ポンプで行い、作業員がパールハンマーでエポキシ樹脂の充填具合を確認しながら行いますが、浮いている全てのタイル下地にエポキシ樹脂が充填される訳ではありません。あくまでも浮いているタイル下地を「点で留める」といった工法になります。下写真右のようにピンニングを行った箇所は、直径10センチ程度の同心円状にエポキシ樹脂が広がります(下左写真)。エポキシ樹脂の注入量を多くして全面に充填しようとすると、返って「共浮き」を発生させ、周辺の健全なタイル面も浮いてしまいます。補修完了時の検査の際、「ピンニング施工個所の周辺が浮いている」とご指摘を受ける場合がありますが、この工法はタイルの浮き(正確にはタイルの下地モルタルの浮き)が残る工法になります。

6.浮きタイルの補修(その他)

現在、タイルの浮き補修にはいろいろな工法が開発されています。左下の写真はコニシ株式会社の「カーボピンネット工法」で、タイル仕上げ面に直接ピンを打ち、繊維ネットとカーボンファイバー入りのモルタルを塗ることによってタイル全面の剥落を防止します。仕上げは既存と同じタイル張りでも塗装仕上げでも可能です。また右下の写真は、FSテクニカル株式会社の「FST工法」で、低騒音・低振動のドリルでタイル自体を貫通して躯体コンクリートまで穴を開け、タイル自体の浮きに対しても、タイル下地モルタルの浮きに対してもしっかりエポキシ樹脂を充填出来る専用の注入ノズルで注入します。ステンレスアンカーピンは、タイル表面に出る頭の部分にタイルと同色の焼付塗装を行い、見た目の仕上がり感を損ねないものとなっています。

7.最後に

最近のマンションはタイル張り工法で施工されたものが多く、それに比例して大規模修繕工事実施時のタイルの浮きの問題も多くなっています。費用、時間、居住者の皆様の生活上のご負担(騒音・振動・粉じん)が無ければ、浮いたタイルは全て張り替えることが望ましいことです。しかし実際は修繕積立金からの支出であり、タイルの浮き補修の数が多くなる程費用がかさみ、それに伴い工期が長くなり、居住者様の負担も多くなるので、全てのタイルの張り替えは出来ません。管理組合様やマンションの管理会社様、設計監理者様との打合せに依りますが、優先順位として、万が一タイルが落下した場合、住民様や外部の第三者に影響を及ぼす外壁面や、見た目で「はらみ」が確認出来るタイルの浮きの場合は張り替えを実施し、その他の箇所はピンニングを実施しているのが現状の改修工事になります。

3シーリング工事について

1.シーリングとコーキングの違い

大規模修繕工事で、多くの質問がある内容の一つに「シーリング工事とはなに?」ということがあります。一般的には「シーリング」では無く、「コーキング」と呼ばれることが多いと思います。シーリングもコーキングは同義語と使用されることが多いですが、はっきりした違いの定義はありません。しかし建築業界の中では、おおよそ「外壁の目地や窓枠廻りに、止水や緩衝(クッション)の目的の為に埋め込むゴム」をシーリングと呼び、「内装で建具や家具等の隙間を充填する目地材」をコーキングと呼び分けています。

2.シーリングの種類

シーリングにはいろいろな種類がありますが、大規模修繕工事で使用されるシーリング材は、大きく分けて4種類になります。
外壁がタイルのマンションで最も使用されているシーリング材が、「ポリサルファイド系」になります。タイルとタイルとの間の「目地」と呼ばれる部位に使用され、非汚染性に優れるというメリットがあります。

また、特に動きの大きい窓枠廻りの金属の間には、柔軟性に優れる「変成シリコーン系」が使用されます。しかし実際の工事では、「ポリサルファイド系」と「変成シリコーン系」を使い分けることが困難な場合が有り、タイル目地とサッシ廻りの両方に「変成シリコーン系」が使用されることが多くあります。
外壁が塗装仕上げの場合、「ポリウレタン系」を使用し、シーリングの上に塗装を覆いかぶせます。「ポリウレタン系」は、シーリング表面の塗装との付着性が良く、完全にシーリングが硬化した後も、手で触ると表面がベタベタしています。またメーカーにも寄りますが、「変成シリコーン系」の上に塗装を覆い被せることも可能です。
最後にごく一部ですが、ガラスとの取り合い等に、「シリコーン系」を使用します。他の3種類に比べ耐侯性、耐熱性、耐寒性、耐久性に優れますが、シリコーン油にて施工箇所周辺が汚染されることがしばしばあります。

3.シーリング工事の管理のポイント

1.既存シーリングの完全撤去
通常はカッターで切れ目を入れ、ペンチ等を使用して引っ張れば既存シーリングは撤去できます。しかし、既存のシーリングが硬化不良により固まっていなかったり、逆に古い建物では材質が油性シーリングのものを使用していて固着し、簡単に撤去することが出来ない場合もあります。

2.プライマーの選定
プライマーとはシーリングを充填する前に塗り、接着性を向上させるものです。雨上がり等、下地が濡れている状態ではしっかりした性能を発揮出来ず、剥離や漏水の危険性があります。また下地がコンクリートなのか、金属なのか、シーリング材が変成シリコーンなのか、ウレタンなのかによりプライマーの種類が異なります。当然、仕様と間違ったプライマーを使用すると、剥離の原因となります。

3.シーリング材の攪拌
シーリング材は一成分形のものと二成分形のものがあります。通常の仕様では主剤と硬化剤の二液を混合して使用する二成分形のシーリング材を使用します。少量であったり、施工性を考慮する箇所であったりする場合において、一部一成分形のカートリッジタイプのものを使用します。二成分形シーリング材の攪拌は、タイマーがセットされた電動攪拌機が用いられます。適正な攪拌時間にて混合しないと硬化不良が発生します。

4.検査の種類

1. ダンベル(張力)試験(機械試験機を使用しての試験)
この試験は、主に既存のシーリングの状態を確認する為に行います。現状のシーリングを撤去し、「ダンベル状」にカットし、シーリングの物性(伸び等)を調べます。10年目を目途に行われる大規模修繕工事でシーリングの打ち替えを行いますが、この試験結果が良好な場合、部分的に打ち替えを行わない場合もあります。
2.簡易引張試験(機械試験機を使用しない試験)
シーリング打ち替え後(14日目以降)、 シーリングの張力及び接着の性能確認試験方法も有ります。シーリングを巾約1センチ程度、長さ約10センチ程度にカッターで切れ目を入れ、約1センチ程度間隔にて印を付けて人の手にて引っ張ります。材質によって基準が異なりますが、あるメーカーでは、変成シリコーン、ポリサルファイドで伸び率200%、ウレタンが150%前後にて合格基準となります。

5.最後に

シーリング工事に於いて、塗装が被るウレタン系シーリングの場合、「ノンブリードタイプ」を使用して下さい。ブリードとは塗装表面が黒く汚染される現象で、これは元来シーリングを柔らかくする為に含まれている油の成分が、塗装を浸透して表面に浮き出ることにより、空気中のゴミが付着して発生します。ノンブリードとは、「ブリードしない」という意味になります。
また、露出する変成シリコーン系、ポリサルファイド系を使用する場合、既存のシーリングの色を確認して下さい。表面上は汚れて黒くなっていても、実際にシーリングを撤去して断面を確認してみるとグレーであったということもあるので、必ず施工者・発注者との間で確認して施工して下さい。

4アスファルトシングル葺き屋根の改修

1.はじめに

近年のマンションでは、アスファルトシングル葺きの屋根が多くあります。通常の改修工事では、比較的大きな面積で緩勾配な屋根は「アスファルトシングル葺き被せ工法」といい、アスファルトシングル材を新たに上から貼る工法が採用されます。しかし勾配が急な屋根や、海沿いや高台にあるマンションでは、建物に対して吹き上げの風が強い為、経年劣化によりアスファルトシングル葺きの接着強度が弱まり、剥がれてしまう事故もまれにあります。

2.アスファルトシングル葺き屋根の改修

被せ工法の場合、まず屋根全体を高圧水洗浄した後、既存アスファルトシングル部の膨れ補修を行います。また軒先(屋根の先端部分)、ケラバ(屋根の先端では無い端の部分)の金物を、アスファルトシングル葺きと一緒に撤去し、新規の金物を取り付けます。これは、吹き上げの風への強度の対策と、雨水の浸水による漏水の対策の為です。

軒先(屋根の先端部分)、ケラバ(屋根の先端では無い端の部分)の金物を、アスファルトシングル葺きと一緒に撤去し、新規の金物を取り付けます 接着材を全面に塗り、防水シートを貼る下地を作ります  その後、接着材(写真は田島ルーフィング株式会社製「リベース」)を全面に塗り、防水シートを貼る下地を作ります。既存アスファルトシングル葺きの上に塗り、新規のアスファルトシングル葺きの下地防水シートへの付着力を向上させます。

防水シートを貼った後、アスファルトシングルの基材(表面に砂の付いた仕上げ材)の裏に接着材を塗り、それを水下(勾配の低い方)から順番に重なるように貼って完了になります。頂上の棟の部分等、強度的に補強が必要な箇所は、釘を打ちます。 アスファルトシングルの基材の裏に接着材を塗り、それを水下から順番に重なるように貼って完了になります。

3.急勾配屋根の防水

急勾配の屋根の場合でも、アスファルトシングル葺きの被せ工法が選定される場合があります。防水層の接着材の接着力と釘打ちによるしっかりした強度が保たれていれば問題ありませんが、急勾配での施工では、写真の様な屋根足場での作業になることによる施工品質の低下、台風等による想定以上の吹き上げの風による既存アスファルトシングル層からの剥離等の心配があります。
アスファルトシングル葺きを被せ工法で行うこと自体には問題ありませんが、設計段階での強度計算、補強の検討を充分に行い、施工の段階でも徹底した品質管理を行わなければ、問題が発生することがあります。

4.機械固定式塩ビシート防水

アスファルトシングル葺き被せ工法の他に、機械固定式塩ビシート防水工法(住ベシート防水株式会社)があります。電動ドリルを用いて既存屋根のコンクートまで穴を貫通した後アンカーを固定し、下の写真の様な接着(電気溶着)するディスクを取り付けます。その下には電気試験と養生の為のシートを敷き込みます。アンカーは既存屋根防水の厚み、躯体コンクリートの強度、新規屋根の風等による引張力等を計算して、その太さ・長さ・間隔(本数)を決定します。急勾配の屋根には、アンカーで機械的に防水層を留める為、効果を発揮します。
反対に工事の際のデメリットとして、「騒音と振動」が出ます。コンクリートを削って穴を開けてアンカーを打ち込む為、どうしても屋根の直下のお宅にはご迷惑をお掛けすることになります。基本的には1日ですが、建物の形状や天候、工程の都合上、2~3日掛かる場合もあります。

塩ビシート防水は、ディスクと塩ビシート、周辺金物と塩ビシート、塩ビシート同士の継目のそれぞれを電気溶着にて接合する為、屋根一面の防水層を形成します。既存防水に全面接着する防水工法に比べ、地震等での躯体コンクリートの挙動に対して、ひび割れや破断が発生しません。

5.事前確認調査

機械固定式塩ビシート防水は、アンカーの引張強度が非常に大切になります。写真は屋根では無く屋上の平面での試験になりますが、実際の施工を行う前に必ずアンカーの引張強度試験を行います。ディスクを固定するアンカーをコンクリートに打ち込み、計算された強度以上の数値が出るかを確認します。
防水の種類によっては、防水層が何層も重なっていたり、断熱層があったりして厚みが違います。また躯体コンクリートの厚みも10cm(過去の経験より)の箇所もあれば、20cmを超える場合もあるので、事前の図面確認や過去の防水工事の履歴を確認し、アンカーの長さや太さ等を決定します。

6.電気試験(完成検査、定期点検、突発的な不具合時)

機械式塩ビシート防水の最大のメリットとして、電気試験が行えることがあります。塩ビシートの下に専用シートを敷くことにより、針の先のような穴が防水層に開いていた場合、電気試験により写真のような電気が流れ、「バチバチ」という音がします。このことにより漏水の原因の特定を素早く行うことが可能になります。ただし、屋上やルーフバルコニーから手が届く範囲のみとなります。
現在、防水の改修にはいろいろな種類の工法がありますが、建物の形状や立地条件、予算、修繕サイクル等を総合的に検討して、より建物に合った防水方法を選択することが必要です。

5炭酸ガスを利用した漏水調査

1.はじめに

昨今、ゲリラ豪雨等の影響により、マンションでの漏水が多くなっています。その原因は、防水そのものの経年による劣化や、防水の納まりの不具合、排水ドレン及び雨樋の排水量不足といった様々であり、またこれらが複合して漏水が発生することもあります。

2.塩ビシート防水の漏水調査

施工されている防水の種類(例えばアスファルト露出防水、アスファルト押さえコンクリート防水、塩ビシート防水、ウレタン塗膜防水)によって調査の方法が異なりますが、今回は塩ビシート防水の漏水調査について紹介します。
基本的に塩ビシート防水のシート同士の繋ぎ目は、溶接(専用の機械のよって一度溶かして接続する)によって一体ものになっているので、漏水の可能性がある箇所は、右の写真の様なアルミアングルで押さえている端部の場合が多くあります。
塩ビシート防水には二つの工法があり、下地材に接着剤等でしっかり貼り付ける「密着工法」と、アンカーとディスクで部分的に固定し塩ビシートの下に通気層を形成する「機械固定工法」があります。
調査をするにあたり、まず左の写真の様にガムテープで目張りを行います。これは、「機械固定工法」は下地材と塩ビシートの間に空気層がある為、今回漏水調査で使用する炭酸ガスがその空気層を通り、アルミアングルで押さえている端部から漏れてしまう為です。

3.水張り試験

次に炭酸ガスでの調査と同時に水張り試験を行います。平場の塩ビシートのジョイント部分や通気管の根元廻りに不具合があった場合には即漏水が発生し、その状況を確認することが出来ます。ただし、漏水が発生した場合には直ちに水張り試験を中止し、排水しなければならず、各居住者への周知はもちろん、現在漏水しているというお宅には在宅して頂く必要があり、絶えずその状況を確認する必要があります。今回の試験では、朝から深夜までの給水で満水になった為、その間現場で待機していました。

4.炭酸ガス試験

水張り試験では漏水が確認されませんでしたが、漏水に繋がらない様な小さな穴等が開いている場合もあるので、水を張った状態で塩ビシート下の通気層と繋がっている脱気筒より炭酸ガスの注入を行います。
その調査で脱気筒の根元より炭酸ガスの吹き出しが確認されました。通常の状態では防水シートがゴム製で密閉されていますが、塩ビシートの下の通気層に炭酸ガスを注入したことにより、塩ビシート下の通気層が膨張し、隙間が発生したものと考えられます。

5.判定の基準について

屋上の平場での炭酸ガスの吹き出しは1個所であった為、水張り試験の水を排水して詳細の調査を行いました。炭酸ガスの吹き出しがあった脱気筒の根元に炭酸ガス検知機のホースを近づけて、その量を測定します。左下の写真の矢印部の最大メモリが2000ppmになりますが、ここまで振り切ればほぼ「防水の口開き」が特定されます。500ppm程度だと、空気中にも炭酸ガスがあるので、測定誤差の場合もあります。

また、平場以外の立上りや笠木部についても炭酸ガスの吹き出しが無いか確認したところ、塩ビシートの押さえのアルミアングルのジョイント部で炭酸ガスの吹き出しが確認されました。

6.補修方法について

今回炭酸ガスの吹き出しが確認されたアルミアングルのジョイント防水には、オーバーブリッジ工法のシーリング処理、脱気筒の根元には三角シールでのシーリング処理を行うことによって漏水の予防を行います。ただし、シーリングについては、特に屋上に於いては紫外線による劣化が起こりやすい為、定期的な点検と補修が必要になります。

6外壁タイルの剥離の問題について

1.はじめに

最近、大規模修繕工事を行っている現場で、「壁一面のタイルが浮いている」といった状況が良く聞かれます。その原因と対策についてご説明致します。

2.タイル下地(モルタル下地)について

タイル下地(モルタル下地) 築年数の古いマンションは、躯体コンクリートの精度が悪いということもあり、その多くは20~30㎜程度のモルタル(水・セメント・砂を混ぜたもの)を左官工事にて、躯体コンクリートの上に塗ることにより、平滑な「タイル下地」を造っています。
タイル浮き調査の打診調査で「コロコロ」と鈍く低い音がした場合、躯体コンクリートとこのモルタルの層の間で浮きが生じています。右の写真でグレーの箇所がモルタルで、白い箇所が躯体コンクリートになります。

3.タイル下地(躯体コンクリート下地)について

建物の新築工事では、15年程前頃から、躯体コンクリートの傾きや段差の精度を良くして、左官による下地補修を極力少なくするようになりました。その為、補修の必要の無い、非常にきれいな躯体コンクリート面に、直接タイルを張ることによって、モルタルによる左官補修の必要が無く、左官補修の材料・手間の削減、工期の短縮につながりました。このようなタイルの浮きは、打診を行うと「カラカラ」という比較的高い、乾いたような音がします。
モルタル下地が無い壁は、右下の写真からも分かるように、白い部分の全面が躯体コンクリートで、タイルと躯体コンクリートの間には、タイルを張る為の薄い圧着セメントしかありません。

4.タイルの剥離原因について

タイルの剥離原因については、下記の内容タイルの剥離原因が挙げられます。
【タイルのみの剥離】
 1)タイルの圧着不足(たたき不足)
 2)タイル裏足に不純物が付着
 3)圧着セメントの鏝圧不足
【タイル圧着モルタルからの剥離】
 1) 左官タイル下地の清掃不足
 2) プライマーの不適正使用(種類・濃度等)
 3) 塗り重ねた場合の1層目の塗り圧力不足
【躯体コンクリートと左官モルタル間の剥離】
 1)コンクリートの表面処理不足
  (荒面処理・洗浄等)
 2)不良モルタル・余剰モルタルの使用
 3)左官モルタルの鏝圧不足

5.タイルの圧着不足について

タイルの裏面は「裏足」と呼ばれ、凸凹した形状になっています。これは圧着セメントとタイルを喰いつきやすくし、タイルの剥離を防止する為のものです。しかし写真のタイルの裏足の様に、圧着セメントが完全に充填されていない為、空隙が出来てしまい、タイル剥離の原因の一つになります。

6.コンクリート型枠について

新築工事のコンクリートを流し込む為に、木製や金属製の型枠を使用します。その種類は下写真の様に、コンパネ(コンクリートパネル)と呼ばれる合板(薄く切った単板を90度方向に重ね合わせたもの)や、打ち放し用に使用されるパネコート(コンパネにアクリル系樹脂を塗布したもの)等を使用します。特にパネコートを使用した場合、コンクリート表面が「ツルツル」に仕上がる為、タイルや塗装の付着性が低くなってしまいます。タイルの浮きが多く発生しているマンションでは、タイルが剥がれた個所の躯体コンクリートの表面は、「ツルツル」の仕上がりの場合が多くなっています。
また、これらの型枠を剥がしやすくする為に、型枠表面に塗っている剥離材も、タイル剥離の原因に拍車を掛けていると考えられます。

7.補修方法について

部分的なタイルの浮きの場合は、エポキシ樹脂とステンレスピンを併用したピンニング工法で補修することが可能ですが、タイルが広範囲に浮いている場合は、一度全部剥がさざるを得ません。下の写真の様に、躯体コンクリートをディスクサンダーや超高圧水で目荒らしを行い、タイルの圧着セメントを付着しやすくする工法があります。最近の圧着セメントは改良され、付着強度が良くなっているので、上記の工法が必ず必要という訳ではありませんが、発注者、施工者、監理者で現場の形状や下地の状況、予算等を検討して、工法の選定を行って下さい。
また、最近の新築マンションでは、このようなタイル剥離が起きない為に、躯体コンクリート下地に最初から凸凹を付けている場合もあり、タイルの剥離問題を改善する方法が取られています。

7太陽光発電と防水を組み合わせた工法について

1.はじめに

現在、国からの助成金も増額され、更に需要が伸びると予想される太陽光発電について、屋上防水と組合せた工法について調べました。また、3月3日~5日に東京ビッグサイトにおいて、新しい工法が防水メーカーより発表されましたので、その内容についても紹介します。

2.従来の基礎

従来の工法で太陽光発電システムを設置する場合、コンクリート基礎を設置しなければならず、既存防水層を撤去し、躯体に連結したコンクリート基礎を造る必要があります。既存シンダーコンクリート(防水の保護コンクリート)及び防水層の撤去、鉄筋・型枠工事、コンクリート打設・養生、防水の再施工といった様に工期が掛かる上、工事期間に雨が降った場合、漏水事故が起こる危険性もあります。

3.防水一体型の基礎

その基礎に替わるものとして、アーキヤマデ株式会社で商品として出している「エネブリッド」は、塩ビシート防水を施工した後、「RR-PV連結ディスク」をアンカー固定と塩ビシート防水に溶着して固定することで基礎としています。このディスクのアンカーは、防水層を貫通することになりますが、塩ビシートへの溶着接合することと、アンカー上部にシーリングを充填してキャップを被せることにより、防水機能を保っています。

4.エネブリッドの特徴

最初に「エネブリッド」について説明します。これは太陽光発電と防水を連結して一体化を図った防水工法になります。メリットは大きく以下の3つになります。
 1)軽量システムなので、建物に余計な負荷を与えない。
 2)大掛かりな基礎工事が不要なので、コストダウンを実現出来る。
 3)新たに架台基礎を造る必要が無いので、工期を短縮出来る。
 また架台の写真から分かるように、エネブリッドは太陽に向けるパネルの角度を小さく設計され、風荷重に対する対策が検討されています。真夏の場合、30°の発電効力が最も優れている為、在来の工法は傾斜角度30°を採用しています。しかし全ての太陽光パネルを南向きに設置出来るとは限らず、設置方位が東側、西側向きになった場合、5°の方が、発電効率が上回ります。その為、風や方位の影響を最も受けにくい、5°を採用しています。

5.ソーラー一体型シート防水システム

今回新しく防水メーカーの田島ルーフィング株式会社より、塩化ビニル樹脂系シート防水と、フィルムタイプアモルファス太陽電池を組み合わせた防水・発電工法「プルーフソーラー」が発表されました。基本の構造は以下の図の様になります。

6.プルーフソーラーの特徴

厚さ1.5㎜~2.0㎜の防水シートと、厚さ1.0㎜のフィルム型のアモルファスシリコン太陽電池を採用することにより、約4kg/m2という結晶タイプ(パネルタイプ)のソーラーシステムと比べて圧倒的な軽さを実現しています。先に紹介したエネブリッドは14kg/㎡になります。
また、右下の写真のように、防水一体型システムなので、架台が設置出来ない勾配屋根やドーム状の屋根にも施工出来ます。また防水シートを機械にて固定する為、下地条件に左右されずに防水とソーラーシステムの施工が可能です。

7.耐用年数について

このシステムを採用するにあたり、次回の防水改修をどの様に行うかということを考えると思います。屋上防水の基本的な保証年数は 10年ですが、耐用年数については15~20年と言われています。また各メーカーや各商品によって異なりますが、おおよそ太陽電池の寿命も20年と言われています。よって次回の防水改修の際には、耐用電池も寿命を迎えているので、防水も太陽電池も交換ということになります。
また、費用対効果については、現在のところでは積極的に提案出来るという確かなデータがありません。2010年3月の時点では、10kw未満の発電量の場合では、48円/kwh(10kw以上では24円/kwh)で買電してもらえます。発電量10kwのソーラーシステムの年間発電量は、約10,000kwで、計算上では48万円相当の買電になります。これが20年続けば960万円相当の買電金額になりますが、実際は使用した分を差し引いた余剰電力を売電するので、計算する為には電気の使用量等多くのデータが必要になり、建物によって違う結果になります。

8.最後に

現在、環境に対する社会の認識が強くなっている為、太陽光発電はますます需要が伸びると考えられます。公共の施設や住宅では設置されることが多くなっていますが、分譲の集合住宅では現在のところほとんど採用されていないのが現実です。廊下の照明や、エレベーター、オートドア等の共用電気を太陽光発電でまかない、余った電気を買電する仕組みを作り、大規模修繕工事と併せて、太陽光発電システムを提案出来るように、今後更に研究して行きたいと考えています。

8塗膜剥離工法について (集塵機付きサンダーケレン工法)

1.はじめに

技術部情報で高圧温水洗浄工法を紹介しましたが、下記の塗膜剥離工法のうち、今回はサンダーケレン工法について紹介します。
1)超高圧水洗浄工法(300~500kg/cm2の水圧で剥離する)
2)超高圧温水洗浄工法(上記の方法にて、60~80℃の高圧温水を使用し、剥離剤又は軟化剤を併用し、塗膜を軟化させながら剥離する)
3)超音波ケレン工法(鉄の刃を微振動させ剥離する)
4)サンダーケレン工法(ディスクサンダーにて塗膜を削り落とす)
5)剥離剤工法(剥離剤を塗膜に塗布し、軟化させた塗膜をカワスキ・ケレン棒にてそぎ落とす)
6)ドライブラスト工法(砂を塗膜に打ちつけ剥離する)

2.サンダーケレン工法

ベビーサンダーと呼ばれる電動工具によって行う通常のサンダーケレンでは、大量の粉塵が発生します。コンクリートに付着した塗膜を、ダイヤモンドの入ったカップと呼ばれる刃で削り落す為、粉塵の他に、コンクリートを削る音と機械のモーター音により、劣悪な環境の中での作業になります。
また、サンダーケレンの場合、刃が均等にコンクリート面に接地しない為、削り過ぎた刃の跡や、削り残しの薄い塗膜が残ってしまいます。

3.粉塵の清掃

その為、掃除機や集塵機を使用して作業を行いますが、大部分が飛散し、ほとんど効果がありません。サンダーケレン作業完了後の粉塵の回収や高圧水での洗浄に、多くの手間が掛かります。 また作業員だけでなく、マンションの居住者に対しても、以下の様な多大な迷惑が掛かってしまいます。
1)換気ガラリからの粉塵の侵入による部屋の内部の汚れ
2)サッシの隙間からの粉塵の侵入による部屋の汚れ
3)粉塵の付着によるエアコン室外機の故障
4)粉塵の侵入によるガス給湯器の基盤の故障
5)騒音によるストレス

4.左官補修

高圧水洗浄を行った後、凸凹になったコンクリート下地を補修する為、左官工事にて平滑に仕上げます。サンダーケレンで作業を行った場合、凸凹が多いのでほぼ全面補修になります。工期的にも費用的にも大きなロスが発生します。厚膜塗装を行う場合、下地の凸凹が隠れると考えられ、仕様によっては左官工事の工程が省略されている場合がありますが、最終の仕上がりで必ず凸凹が目立ってしまうので、左官補修を確実に行って下さい。

5.集塵機付きサンダーケレン

通常上のサンダーケレンに対して、集塵機付きサンダーケレンとは、ベビーサンダーにカバーとホースを付け、大型の掃除機の様な集塵機で粉塵を吸い込みながら塗膜剥離を行うものです。塗膜の固さや塗膜の塗り重ね回数、塗膜の劣化の状況により変わりますが、1回の作業で塗膜剥離が出来ない場合は、写真右下の様な超音波剥離を先行して行います。超音波剥離とは、大きな「ノミ」の先を、超音波の様に細かく振動させて塗膜を剥がす工法です。
集塵機付きサンダーケレンは粉塵が出ないだけでなく、サンダーの刃の廻りに付いている丸いカバーによって、サンダーの刃が壁に対して平行に保たれる為、削りすぎがなくなり、均一な塗膜剥離が可能になります。よって全面左官補修ということはなくなり、新築時のもともとのコンクリートの巣穴や段差補修を行うだけで済むと共に、粉塵が格段に少なくなる為、その後の高圧水洗浄でも多くの手間が軽減されます。

6.養生

集塵機付きサンダーケレンといっても、窓や手摺のコーナー部や幅の狭い部分については、カバーが完全に壁に接しない為、粉塵が飛散する場合もあります。その為、窓や室外機、ガス給湯機、換気ガラリ等の養生が必要になります。この期間は窓を開けての換気が出来なくなり、エアコンの使用が制限されます。ただし、施工状況によっても変わりますが、2~3日間なので、他の剥離工法より短い期間で工事が完了します。

7.超音波ケレンの併用

壁の入隅部や手摺の裏側、雨樋・エアコン室外機の裏側等、集塵機付きサンダーの刃が届かない箇所や、サッシや玄関枠との取り合いで、サンダーの刃と接触するとキズを付けてしまう恐れがある箇所があります。その様な部位に関しては、先に説明しました超音波剥離工法にて、刃の先を奥まで入れて、サッシ等をキズ付けない様に細かい作業を行います。その為建物の形状が複雑になればなるほど、剥離の手間が掛かります。

8.塗装仕上げ

最終仕上げで塗装工事を行いますが、通常のマンション改修工事での塗り重ねの仕様では、微弾性フィラー+水性シリコン2回の合計3回塗りで仕上げます。しかし今回の工事では、既存塗膜を撤去している為、新築時と同様のコンクリート下地になる為、カチオンフィラー+溶剤シーラー+高弾性下地保護材2回+水性シリコン2回の計6回の塗装を行っています。しかし右下の写真の様に、新築時のコンクリート下地の巣穴が埋まりませんでした。塗装工事が完了してからの補修は非常に手間が掛かる為、下地の左官補修の段階で、しっかり巣穴を処理しておくことが重要になります。

9.最後に

最近では、集塵機付きサンダーケレンは更に改良され、下図の様な防振ゴムをサンダーのカバーに貼ることによって、騒音や振動を軽減しています。また厚いステンレスのプレートをサンダーに装着し、より大きな面に接着させてサンダーを安定させることにより、凸凹の無い均一な下地を作成出来るようになっています。更に集塵性能も向上し、塗膜の種類にも寄りますが、足場の下に一切の粉塵を落とさないように作業を行っています。

9塗膜剥離工法について(超高圧温水+軟化剤併用工法)

1.はじめに

現在、主な塗膜剥離工法は以下の種類があります。
今回はこの中の高圧温水洗浄工法の紹介をします。 •超高圧水洗浄工法(300~500kg/cm2の水圧で剥離する)
•超高圧温水洗浄工法(上記の方法にて、60~80℃の高圧温水を使用し、剥離剤又は軟化剤を併用し、塗膜を軟化させながら剥離する)
•超音波ケレン工法(鉄の刃がねを微振動させ剥離する)
•サンダーケレン工法(ディスクサンダーにて塗膜を削り落とす)
•剥離剤工法(剥離剤を塗膜に塗布し、軟化させた塗膜をカワスキ・ケレン棒にてそぎ落とす)
•ドライブラスト工法(砂を塗膜に打ちつけ剥離する)

2.工事の着手

通常の大規模修繕工事では、足場から始まって下地・シーリング補修、洗浄、外壁塗装、防水と流れ、バルコニーの使用制限のある居住者に負担の掛かる塗装・防水工事は、大規模修繕工事の後半になります。その為、居住者の感覚としては「徐々に大変な工事になる」と感じる方が多いと思います。
しかし塗膜剥離を伴う大規模修繕工事の場合は、足場工事が終わるか終わらないかのうちに、軟化剤の塗布の為にバルコニーをビニール養生し、居住者はバルコニーに出ることはおろか、換気をすることも出来なくなります。秋現場では、8~9月に掛けて工事を着手する為、真夏の時期に養生になります。また塗膜を剥がしやすくする軟化剤の成分は、シンナーとは異なりアルコールを主としていますが、シンナーと同じ程の異臭がします。またその後の塗膜剥離作業では、2tトラックに載った400kg/cm2の圧力の出る洗浄機のエンジン音や、高圧水が外壁や足場に当たる音、水流の音が鳴り響き、大騒音となります。

3.足場について

400kg/cm2の超高圧水洗浄は、作業員に対して大きな水圧の反動が掛かるため、両足を肩幅以上に広げて踏ん張る必要があります。その為600枠では狭く、900枠以上(写真の現場は600枠で行っています)で足場を組み立てる必要があります。また飛散防止の為、メッシュシートは建枠の外側でメッシュシート同士をぴったり隙間無く結束しなければなりません。安価な質の悪いネットを使用すると、温水でメッシュシートが縮み、剥離カスが足場の外へ飛散します。

4.超高圧水洗浄(バルコニー側)

真夏の時期に超高圧水洗浄を行うと、「エアコンの使用可」として作業を行わざるを得ません。通常の下地補修やシーリング工事の際は、作業の為にエアコン室外機を「少しずらす」という動かし方をします。しかし超高圧水洗浄では踏ん張る足元を確保する為に、室外機を大きく移動しなければならず、冷媒管からのガス漏れ事故が起こることが多くなります。また、飛散した塗膜が室外機のファンに付着し、カバーを外して清掃を行ったり、室外機自体を交換することにもなります。
その他に、「換気ガラリから洗浄水が浸入しての電話機の故障」「洗浄水の圧力による窓ガラスのひび」「洗浄水の浸入によるガス給湯器の基盤の故障」「室外機の排水ドレン(ジャバラホース)の破損」「サッシの隙間からの部屋内への漏水」と多くの問題が起こる場合があります。

5.超高圧水洗浄(玄関側)

400kg/cm2の超高圧水に直に人体が触れると大けがになります。よって洗浄作業中、急に居住者が玄関から飛び出したら大事故になる為、作業時間帯は原則「玄関からの出入り禁止」とします。ただし急な出入りがある場合は、居住者から現場事務所に電話をして頂き、現場事務所から洗浄箇所に配置しているガードマンに無線で連絡し、作業員へ中断の伝達をします。非常に作業能率が悪く、費用も掛かります。また作業で注意しないと、「インターホンに水が入って壊れた」「照明器具が付かなくなった」「玄関ポストの郵便物が濡れてしまった」等の問題が発生します。

6.排水処理

剥離作業後に大きな問題となるのは、軟化剤によってゲル状になった塗膜の処理があります。膜状で大きく剥がれた塗膜は、手で袋詰めにして回収し、産業廃棄物として処理を行います。しかし、軟化剤の作用によってゲル状(泥状)になった塗膜は、ドレンから雨樋を流れて外構の雨水枡へと流れてしまい、周辺の環境汚染を引き起こします。バルコニー1箇所ずつの排水処理は不可能に近いので、雨樋の1階の部分で仮設の配管に切り替え、すべて回収して同じように産業廃棄物として処理をする必要があり、非常にコストが掛かります。

7.まとめ

現在、超高圧水洗浄工事は外壁塗膜を剥がす工事として一般的に行われています。しかし、「塗膜を剥がす」という工事は、どの様な工法を選択しても、居住者については非常に負担の掛かる工事になります。大規模修繕工事に於いては、3~6か月、大きな現場では7、8か月と長期に渡って足場が掛かり、ネットが張られています。通常の工事でも採光や換気、バルコニーの使用制限等の制約がある為、特にこの剥離工事については、工事の仕様選定の段階から、充分な打合せと広報を行ってから工事を着工することが必要となります。

剥離工事を行うに当たり非常に苦労する点もありましたが、その苦労の分とてもきれいな仕上がりとなりました。ご協力頂いた居住者の皆様に感謝致します。

10FST工法について
(各多層空隙位置停止対応アンカーピンニング部分(全面)エポキシ樹脂注入工法)

1.はじめに

タイル浮き補修工法の「FST工法」について、FSテクニカルというメーカーの工法の説明をいたします。特徴として以下の7項目があります。
1)ドリルの精度向上
高回転、高トルク、高精度、高作業能率を実現。
2)穿孔刃のノンスリット化
穿孔時のかじり音、振動、騒音を低減。
3)ノズルの自動調節機能
孔の最深部から樹脂を注入しつつ、同時にその注入圧から生じる反発圧より、ノズルが自動的に戻る機能を備えている。
4)手動による調整
手動機構によりノズルの樹脂注入口の位置が自由に調整でき、常に樹脂注入状況を確認しつつ、注入作業を進めることが出来る。
5)樹脂注入量の調整
注入孔の位置が自由に調整出来ることから、樹脂注入量の調整も可能となり、樹脂の過剰な注入を回避することが容易になった。
6)最深部からの段階的注入
手動によるノズル口の微調整は、一層浮、二層浮、三層浮、四層浮等のどのような多層空隙に対しても、確実な樹脂注入を可能とし、樹脂注入のみの外壁改修補強も可能。
7)ラージネックピンによる仕上げ
キャップ一体型の全ネジピンであるために仕上がりがきれい。

2.従来のエポキシ樹脂の注入した場合

最初に、一般に行われているピンニング工法に於けるエポキシ樹脂の注入の状況の説明です。上部の穴に注入口を差し込んでエポキシ樹脂を注入する と、下部に圧縮されたエアー溜まりが出来て、注入口を外すと同時にエポキシ樹脂の半分以上が飛び出して来ます。通常のピンニング工法ではエポキシ樹脂が充填されないことがあります。

3.注入口付き(底部注入)ノズルでのエポキシ樹脂の注入

次に注入口がストロー状に伸び、削孔した穴の底から噴出す様にエポキシ樹脂を注入し、エアー溜まりを無くす工法でエポキシ樹脂の注入をし ます。従来のと方法と比較するとかなりのエポキシ樹脂が充填され、ピンニングの効果が期待出来ます。
しかし、実際の「浮き」の箇所は、躯体コンクリートとモルタル層、モルタル層とタイルの圧着セメント層、圧着セメント層とタイル自体といった様に、多層に渡っている場合が多く、いくら注入を行っても「浮いた音が消えない」ということが良くあります。注入口付きノズルでは、底部の1層目には充填されますが、2・3層目に充填することが出来ません。

4.FSノズル(多層空隙注入ノズル)でのエポキシ樹脂の注入

FST工法ではまず、金属製「耳かき」状の棒を削孔した穴に差し込み、先端を引っ掛けて浮きがある空隙を見つけます。その空隙までの距離をFSノズル(多層空隙注入ノズル)にマーキングし、そのマーキングまでストロー状の注入口を伸ばして、1層目の躯体コンクリートとモルタル層の注入を行います。
2・3層目の注入は、1層目に充填されたエポキシ樹脂の反発力により、FSノズルの注入口(下右写真矢印部)が自動的に上に浮き上がり、2層目、3層目と順次充填されて行きます。

5.穿孔機械

穿孔は、高回転、高トルク、高精度、高作業効率を実現したT-2ドリル(湿式軸低騒音ドリル)を使用し、削孔時のかじり音、振動、騒音を低減しています。

6.ラージネックピン

また、注入穴に差し込むラージネックピン(キャップ併用首太ネジピン)は、キャップ一体型の全ネジピンである為、仕上がりが非常にきれいで、タイルの色に合わせウレタン樹脂の焼付け塗装を行っています。

11ゴンドラに替わる昇降足場(ワークプラットホーム)の概要について

1.はじめに

関西や北海道では既に実施されていますが、枠組足場やゴンドラに替わる足場としての昇降足場(ワークプラットホーム)を紹介します。ワークプラットホームはドイツのヘック・マニュファクチャリング社が開発し、ガデリウスというヨーロッパに拠点を持つ商社が日本に輸入しています。関東ではリースとして数社しか扱っていません。

2.設置方法

ワークプラットホームはゴンドラでは無い為、足場と同じように組み立て開始1ヶ月前に「足場設置届」を提出することになります。組み立てはリース会社の鳶に依頼することも出来ますが、リース会社の指導を受けて、直接組み立てることも可能です。
実際の施工日数は、マストの基礎の部分及びデッキ部分の組み立てで1日、その完成したデッキに長さ1.5m、約40kgのマストを2本載せ、昇りながら30~40mのマストを組み立てるのに1日、合計2日になります。最高高さは100mまで組み立て可能で、別の仕様では地盤の状況にもよりますが、200mまで組み立て可能です。デッキの長さ方向では2本マストで最大32.6mになります。また勾配の角度にも寄りますが、斜壁にも設置可能です。

3.使用方法

操作はリース会社の指導を受ければ特別な資格の必要は無く、操作盤の右脇にある黒い小さなレバーを上下するだけで簡単に操作出来ます。その昇降のスピードは毎分9.7mで、ゴンドラよりスムーズな昇降速度のように感じました。マストの上部・下部それぞれに昇降限界を感知するリミッターがあり、建物の形状によりその位置を自由に設置出来ます。
労働基準監督署から、操作時は必ず作業員はデッキ部に乗って移動するように指導されているとのことでした。

4.供給電源

ゴンドラでは通常200Vを電源としますが、ワークプラットホームは400Vの電源を必要とします。東電の電柱から200Vを引き込み、左下の写真の様な1m×0.5m程度の大きさのトランスと呼ばれるものを設置するか、右下の3m×1mの大きさの400V発電機を用意しなければなりません。

5.養生・飛散防止

養生・飛散防止  枠組足場も同じですが、特にゴンドラでは建物との隙間が発生じ、洗浄水や塗料の飛散事故が起こりやすい状況です。ワークプラットホームはデッキ下部からパイプを跳ね出し、足場板等を敷き詰め、どんな形状の隙間も埋めることが出来る為、デッキと建物との隙間からの塗料・洗浄水の飛散、工具等の落下を防ぎます。また洗浄養生・飛散防止 工事の際は、デッキの下部から下階バルコニーにシートを張り、下階へ洗浄水が流れる様に施工しているとのことです。
また、現状では高さ方向にはデッキ部が1層しかありません。手摺から上部を覆う様な傘がオプションとしてあるので、それを利用して左の写真のように、メッシュシートで囲い込む方法が良いと考えられます。

6.施工手順

実際の他社の施工を見ると、北面の廊下側及び東・西の妻面は足場を組み立て、プライバシー・防犯・採光の面から南面のみワークプラットホームで施工する方法が多い様です。またデッキを上下に何回も動かすことは非効率的なので、従来の枠組足場で行われる縦方向の工区分けでは無く、例えば14~12Fを1工区、11~9Fを2工区といった様に、横方向の工区分けを行い、デッキを上階で固定し、妻側の足場からデッキに乗り込んで作業を行っているとのことでした。
また作業終了後のデッキの仮置き位置を1週間ごとに替え、各お宅でデッキを置いてあることの煩わしさが続かない様な配慮をしているそうです。

7.今後の検討課題

今後、以下の項目について検討しなければなりません。
1)洗浄やタイル撤去の際の養生方法
2)足場が無いことによって生じる、作業に対しての警戒感の無い居住者に対する広報
3)通常の足場作業と異なった工程計画
4)協力業者に対するワークプラットホームの施工技術の教育今後の検討課題

ワークプラットホームは、足場と比較して高額になりますが、1Fが店舗・駐車場・通路の箇所で、ブラッケットを設置して足場を設置する様な現場で、ブラケットを設置する費用を比較した場合、ワークプラットホームを利用出来るのではないかと考えます。

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