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■アスファルトシングル葺き屋根の改修

1.はじめに
 近年のマンションでは、アスファルトシングル葺きの屋根が多くあります。通常の改修工事では、比較的大きな面積で緩勾配な屋根は「アスファルトシングル葺き被せ工法」といい、アスファルトシングル材を新たに上から貼る工法が採用されます。しかし勾配が急な屋根や、海沿いや高台にあるマンションでは、建物に対して吹き上げの風が強い為、経年劣化によりアスファルトシングル葺きの接着強度が弱まり、剥がれてしまう事故もまれにあります。
アスファルトシングル葺き屋根の改修 アスファルトシングル葺き屋根の改修

2.アスファルトシングル葺き屋根の改修
 
 被せ工法の場合、まず屋根全体を高圧水洗浄した後、既存アスファルトシングル部の膨れ補修を行います。また軒先(屋根の先端部分)、ケラバ(屋根の先端では無い端の部分)の金物を、アスファルトシングル葺きと一緒に撤去し、新規の金物を取り付けます。これは、吹き上げの風への強度の対策と、雨水の浸水による漏水の対策の為です。 軒先(屋根の先端部分)、ケラバ(屋根の先端では無い端の部分)の金物を、アスファルトシングル葺きと一緒に撤去し、新規の金物を取り付けます
接着材を全面に塗り、防水シートを貼る下地を作ります  その後、接着材(写真は田島ルーフィング株式会社製「リベース」)を全面に塗り、防水シートを貼る下地を作ります。既存アスファルトシングル葺きの上に塗り、新規のアスファルトシングル葺きの下地防水シートへの付着力を向上させます。
 防水シートを貼った後、アスファルトシングルの基材(表面に砂の付いた仕上げ材)の裏に接着材を塗り、それを水下(勾配の低い方)から順番に重なるように貼って完了になります。頂上の棟の部分等、強度的に補強が必要な箇所は、釘を打ちます。 アスファルトシングルの基材の裏に接着材を塗り、それを水下から順番に重なるように貼って完了になります

3.急勾配屋根の防水
 急勾配の屋根の場合でも、アスファルトシングル葺きの被せ工法が選定される場合があります。防水層の接着材の接着力と釘打ちによるしっかりした強度が保たれていれば問題ありませんが、急勾配での施工では、写真の様な屋根足場での作業になることによる施工品質の低下、台風等による想定以上の吹き上げの風による既存アスファルトシングル層からの剥離等の心配があります。
 アスファルトシングル葺きを被せ工法で行うこと自体には問題ありませんが、設計段階での強度計算、補強の検討を充分に行い、施工の段階でも徹底した品質管理を行わなければ、問題が発生することがあります。
急勾配屋根の防水 急勾配屋根の防水 

4.機械固定式塩ビシート防水
 アスファルトシングル葺き被せ工法の他に、機械固定式塩ビシート防水工法(住ベシート防水株式会社)があります。電動ドリルを用いて既存屋根のコンクートまで穴を貫通した後アンカーを固定し、下の写真の様な接着(電気溶着)するディスクを取り付けます。その下には電気試験と養生の為のシートを敷き込みます。アンカーは既存屋根防水の厚み、躯体コンクリートの強度、新規屋根の風等による引張力等を計算して、その太さ・長さ・間隔(本数)を決定します。急勾配の屋根には、アンカーで機械的に防水層を留める為、効果を発揮します。
 反対に工事の際のデメリットとして、「騒音と振動」が出ます。コンクリートを削って穴を開けてアンカーを打ち込む為、どうしても屋根の直下のお宅にはご迷惑をお掛けすることになります。基本的には1日ですが、建物の形状や天候、工程の都合上、2〜3日掛かる場合もあります。
機械固定式塩ビシート防水 機械固定式塩ビシート防水
 塩ビシート防水は、ディスクと塩ビシート、周辺金物と塩ビシート、塩ビシート同士の継目のそれぞれを電気溶着にて接合する為、屋根一面の防水層を形成します。既存防水に全面接着する防水工法に比べ、地震等での躯体コンクリートの挙動に対して、ひび割れや破断が発生しません。

5.事前確認調査
 機械固定式塩ビシート防水は、アンカーの引張強度が非常に大切になります。写真は屋根では無く屋上の平面での試験になりますが、実際の施工を行う前に必ずアンカーの引張強度試験を行います。ディスクを固定するアンカーをコンクリートに打ち込み、計算された強度以上の数値が出るかを確認します。
 防水の種類によっては、防水層が何層も重なっていたり、断熱層があったりして厚みが違います。また躯体コンクリートの厚みも10cm(過去の経験より)の箇所もあれば、20cmを超える場合もあるので、事前の図面確認や過去の防水工事の履歴を確認し、アンカーの長さや太さ等を決定します。
事前確認調査 事前確認調査

6.電気試験(完成検査、定期点検、突発的な不具合時)
 機械式塩ビシート防水の最大のメリットとして、電気試験が行えることがあります。塩ビシートの下に専用シートを敷くことにより、針の先のような穴が防水層に開いていた場合、電気試験により写真のような電気が流れ、「バチバチ」という音がします。このことにより漏水の原因の特定を素早く行うことが可能になります。ただし、屋上やルーフバルコニーから手が届く範囲のみとなります。
 現在、防水の改修にはいろいろな種類の工法がありますが、建物の形状や立地条件、予算、修繕サイクル等を総合的に検討して、より建物に合った防水方法を選択することが必要です。
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